和歌山 浜の宮カップ
(ジャパンサーキットグランプリシリーズ第1戦)
2004/6/12〜13



激闘!(?)参戦記
レポート:J-222

レースに出るとナニを得るんだろう。
勝つ人がいるかわり、必ず負ける人がいる。
それでもみんな出るのはナゼなんだろう。
ナニかを「証明」したいから?
ナニかを「確認」したいから?
ナニかを「試したい」から?

私は、レースでナニを「試し」、ナニを「確認」し、
ナニを「証明」しようとしているのだろう。




5月27日 〜スティフ・HP/BBSより

Formula組合 投稿者:j20  投稿日: 5月27日(木)17時26分43秒
zaki調子はどうですか?
私はひとりなので調子いいんだか悪いんだか?さっぱり????フィジカル面では順調に体をいじめ追い込み毎日グッタリ!!
ところで
和歌山のレース、M.P.Gは何人参加ですか?
ちなみに私はひとり6/4に大阪に飛び5日、6日は甲子園で練習、7日から和歌山入りし、9日に蔵内選手と合流の予定。

組合理事長へ 投稿者:zaki  投稿日: 5月27日(木)21時46分41秒
拝啓 お元気ですか?やっとニューセール来て、今日初めて11.0乗りました。セールぴかぴかで気持ちいい♪って言ってるばやいじゃないや。すこぶる調子よろしいですよ。フリーの走りでは…レース形式の練習は気持ちばっかり先行しちゃって(;_;)和歌山は今のところ
決定してるのは三人で、悩めるシニアが一人!変更有り次第連絡します。敬具

和歌山 投稿者:zaki  投稿日: 5月27日(木)23時28分48秒
酒飲ませた結果j222 akihito azegami氏参加と相成りました。今の所、計四人です。今週末に最終人数決定いたします。


 まるでお酒のイキオイで参加が決まったような書き方である。まぁ、その点に関して数パーセントは認めざるを得ないが、最近の若手の頑張りに刺激されたということもおおいなる理由だ。年寄り(とは心底おもっちゃいないが)としては、このへんで頑張っておかなくては「置物」にされてしまう。実際、私より年輩でサーキットで頑張っている方もおられる。さて、私はどこまでやれるやら……。


6月10日(木)

 台風が近づいている。宮古島で風速50メートル!予想進路によれば、レース当日、和歌山直撃もありうる。

 「ああ”っ、どうしてエントリーしてしまったんだろう」



6月11日(金)

 台風はちょうど中部地方にいる。そのままの進路なら、台風とすれ違うカタチで和歌山入りである。直撃は避けられたが、「吹き返し」がちょっと心配。でも吹かないよりイイか。

 レース前夜。道具の積み込みである。
 午後6時にスティフに集合。千葉からは、千葉M.P.Gの631/ザキ、J222/アゼガミ、J31/ニイムラ、J-34/ロボ、そして同じ千葉勢のJ85/コング選手が参戦。1台のハイエースに道具を積み込む。
 5人で1台だが、アップウインドだけなので比較的スムーズに積み込めた(道具をケリ入れることなく)
 一度解散後、午後11時に千葉を出発。コングが先日飲み屋でまとめた「レーシング必勝十カ条(初級編)」を見せてもらい、頭の中で復唱する。

1、まず風向、風速を確認する。
2、障害物を確認する。
3、本部船へ行き、スタートの見通しを確認する。
…………
 「ゼット旗が揚がってからレース海上へ行って、スタートするまで、最初は、ナニしたらイイか分からないでしょ。アゼさん、これおぼえて、マニュアルだと思ってこの通りにすればイイですよ。やるべきことがあれば、よけいなことで悩んだりナーバスになったりすることなくなるから」

 おお、コング、イイやつだぁ。


 台風がもたらす風雨に突入するようにしてハイエースを走らせる。都内で渋滞にハマりちょっとイライラしたけど、その後は順調。朝方、明るくなりかけた有料道路の料金所で「おおきに」と声をかけられ、近畿へ来たことを実感する。


6月12日(土)

 朝8時頃、レース会場に到着。駐車場の奥の奥でJ20/杉原ユージ選手と合流。この大会に参加するM.P.Gのメンバー5人がそろった。台風の影響が微塵も感じられない会場で、セッティングに入る。

 大きいセイルから張る。
 私は10.0、そして9.3だ。7.6も登録しているが、ちょっと躊躇してから後回しにした(これがあとで反省の種に……だって、メンズでそんなサイズ張っている人いないし、みんな最小で9.8くらいだったし、ちょっと恥ずかしかったし、翌日あんなに吹くなんて思ってもみなかったし……)


 9時、開会式がはじまり、セイラーズミーティングとつづく。
 「あの柵のワキのボンテン付近は、潮が満ちると隠れます。不用意に突っ込むのは危険です。あの竹竿付近の海底には折れた竹が刺さってます。不用意に足を突っ込むと危険です……」 そして、ウエイティングに入る。眠い……。


 「アゼさん、こういうレース、はじめて?」
 同じ千葉からの305/小川さんが訊いてきた。彼は検見川浜の南西うねりでもレイダウンばかりやる(本人はそれしか出来ないと言っている)スーパー親父(っていっても同い年)である。
 「うん、はじめて。アップのレースは、ヴァンとMRC合同練習会でも模擬レースくらいかな」
 「へぇ〜、目標は?」
 「完走。できれば順位がつくこと」


 お昼近くになって風がソヨソヨしはじめ、数人が海上へ出る。風は西よりでクロスオン。たまにブロウで誰かが走るという感じ。午後になり少し北よりにシフトするが風速は変わらず。
 私も10.0で出るが、ブロウで何回か走った程度。でもアップウインドの道具には1週間以上乗っていないから、少しでも「カン」を取り戻さなくては。それと、海上の様子、障害物や海から見える景色などをチェックする。


 4時頃、本日の予定終了。レースは明日に持ち越された。予報では「北・やや強く」が出ている。アップウインドならばおそらく確実にレースが行われるだろう。私たちは会場から車で5分ほどのホテルへチェックインし、近くのお店で英気を養うことにした。
 5時半から飲み始めれば早く眠れる、という望みは……おそらく成就したのだろう。
 2軒ハシゴした後、ショッピングセンターで買い物をしたあと、私は時間も知らずにベッドで気絶していた。ショッピングセンターで撮ったデジカメの記録時間は10時34分になっていた。


(ホテルはこんな感じのビジネスホテルでした)


6月13日(日)

 朝、7時に目が覚めた。私としては奇跡のような時間だ。窓から入る朝日が爽やかである。8時に会場着。J20杉原選手は7時からすでに海上に出ているという。う〜ん、早起きは苦手だ。
 快晴。風も吹いている。オフショアだからうねりはさほどないが、時折くるブロウがすごい。海が青い。空も青い。


 9時、セイラーズミーティング。10時からのスタートが宣言された。

 「レースはバック・トウ・バックで2レース続けてやります。風はアベレージで16ノット。ブロウで23ノットあります。オフショアなのでかなりガスティです。本日のコンディション下では、運営艇は○×◎×に設定する必要があり、レスキューはありません。スムーズなレース運営のため、よほど自信のない選手は出艇を控えてください。スタートはヨットハーバーの沖。行きはかなり下り、帰りはかなり登らなくてはなりません。繰り返しますが、自信のない選手は出艇を控えてください。また、コンディションがコンディションですので、レディスは、指示があるまで海上には出ないでください……」

 私は、説明を聞きながら、少し心が重たくなった。それを、どうコントロールしようかと思った。でも、説明が終わった後、会場にはクイーンの「ウィ・ウィル・ロッ ク・ユー」が流れ始めた。それを聞きながら、私は「ヘルム峡谷の戦いに立ち向かうアラゴルン」になっていた。ちょっと勇気が湧いてきた。そうして歩いていたら、その顔を見たJ51/柵木さんがこう言った。

 「キープ・スマイル!」

 よほど緊張した顔をしていたのかもしれない。今度、私はJPN67/山田プロの笑顔を思い出し、「表情だけ山田プロ」になっていた。ちょっとラクになった気がした。

 柵木さん、あなたはイイ人だぁ。


 7.6を張ろうか? ちょっとだけ考えた。
 でもみんなは9.8〜10.0。海上を見るかぎり「ブロウはきついけど、オフショアでガスティだからナイところはナイ」という印象。私は9.3で出ることに決めた。
 「わぁ、登ってしまう!」
 これが第一印象。風は吹いている。私の「アップウインド人生」では、これまでの最大の風だった。取りあえず数往復して、ブームの高さを少し直す。カミマークはどこにあるんだろう。見つけられない。本部艇ははるかにシモにある。他の選手が集まってきている。私もボードをシモに向けた。
 本部艇付近。
 80人ものセイラーが、うじゃうじゃといる。コングに言われた10カ条のうち、まだいくつも出来ていない。でも、だんだんとスタート時間が迫る。ザキに言われた「スタート前のダメダメポジション」を避け、「よしよしポジション」をキープしようとセイルを落としていたら、山田プロがやってきた。ちょうど彼の進路と私の流され具合がミートする。セイルアップしようとしたら、「大丈夫ですよ〜」と、あの笑顔を振りまきながら難なく避けていった。

 山田プロもイイ人だ。


〜スティフ・HP/BBSより

和歌山!!
 投稿者:レディース  投稿日: 6月13日(日)10時01分21秒
おはようございます。
本日の和歌山は、ピーカンババブキ!!日本とは思えないほどの海の青さ!!
サーキットクラス第1レースは、AM10:00スタート!あっ、たった今、始まったよ〜ん みんながんはれぇ〜p(^^)q


 ちょうどその時、私はまだ本部艇の少し後にいた。途中までザキの教えてくれた作戦通りだったが、ツメが甘かった。でも、作戦はそのまま決行。みんなよりちょっと遅れてラインを切り、スグにタックを切る。

 どうしたのだろう。風は吹いているのにスピードがのらない。プレーニングしているのに「遅い!」。どこかに力が入っている? 風の角度を無視している? 遅いし登らない! 
 堤防が近づいたところでタック。アウトへ向かう。トップ選手はすでにはるか彼方を疾走している。どうして彼らはあんなに速く、高く登れるのだろう。いやいや、それを今考えてもしかたがない。今は自分のできることを考えよう。私は、セイルに向かい、呪文のようにこう話しかけた。


 「オレとコイツ(セイル)とお前(風)だけ〜」
 「オレとコイツとお前だけ〜」
 「オレとコイツとお前だけ〜」


 う〜ん、それにしても、どこでタックするべきか分からない。他の選手のラインを参考にするしか知恵が浮かばない。行けども行けども、上マークが見えない。いったいどこまで登ればイイのか。
 何回かタックをしてマークを発見! なんとか届くかと思うが、ダメ。再びタックしてタック。おう、今度は届く。わっ、届きすぎ。マーク船に行っちゃうぞ。上マーク回航。下りのレグだ。


第1レース、上マークへ向かう各艇)


 下りは苦手だと思っていた。
 でも、どうしてだろう。下れる! 波とのビートがうまくマッチしているのだろうか。余分なタック中に抜かれた選手を何人かパスする。沖に伸ばしたら風が弱くなり、そこでジャイブ。見ると、トップ集団はすでに2周目に入っているようだ。いや、気にするな。今、できることだけをやるんだ。

 下りはイケルかもしれないと、ちょっとだけ思ってしまった。
 でも、それは集中している時だけだ。ちょっと集中力が欠けるとヤバイ。そして、集中を持続させることは難しい。エネルギーゲージは、体も心もかなり心許なくなってきている。

 「2周できるんだろうか!?」

 分からない。でもともかく1周はしてみよう。
 下マークを回航(このマークもやっと見つけた!)。で、条件反射のように再び上へ向かう。
 「次ぎの上マークまで行ってみよう」
 私は、悲鳴を上げそうな心身に言い聞かせ、風上に目をやった。
 海が素晴らしくキレイだ。深い紺碧の部分と、サイパンのようにエメラルドグリーンの部分とがある。白波からこぼれる飛沫が陽光にキラキラと輝く。みんな美しい。

 「オレって、ちょっと幸せかも……」

 2回タックを切って岸に向かいながら、私は十カ条のどこかに書いてあったことを思い出した。マスト越しに見える岸の景色を脳裏に焼き付ける。それを覚えた上でタックを切った。
 「このまま上マークを回れば、あとはまた1回下ってゴールだ。よし、ゴールしてみよう!」

 不思議だ!下れる! 前を行く数人の選手よりさらに深い角度で下る。ジャイブまでに5人まとめてパス。おお、これは気持ちがイイ。ああ、でもジャイブで沈。セイルがとても重たい。やっぱり疲れている。腕は平気だが、足がつりそうだ。
 くそっ。

 その間、何人にパスされたか分からない。まぁ、どっちにしても最後尾のグループだろうし。ああっ、でもくやしい。せっかく追い抜いたのに。
 それにしても疲れた。ノドもからからだ。水が飲みたい。そうだ、このレースが終わったら、ビーチへ帰ろう。そして冷たい水を飲もう。あっ、ジャイブしなくっちゃ。確か下マークはあっちのほうだ。

 下マークを回航して、私はゴールした気になっていた。そのまま本部船に向かって流していたら、後からバシャバシャとプレーニング音。ふと前を見ると、本部船の風下に小さなマークが。そうだ!あそこがゴールだ。アビームのレグがあったんだ。
 私は再びセイルを引き込み、パンピングした。だが、時すでに遅し。ゴール直前で追い抜かれてしまった……。


 ビーチへ帰る元気もない。
 しばらくセイルを落として休んでいると、6分前の合図が出た。反射的にタイマーを合わせてしまった……。

 「もう1レース、……頑張ってみよう」

 第2レース、スタート。
 やっぱり遅れた。
 今回は、ポートスタートの人やスタート後に即タックを切る人がたくさんいる。逆にスタボー側がやや空き? 私は先頭集団が過ぎ去った後のスタボーを伸ばした。ああ、でもやっぱりスピードが乗らない。波が向かいからくる。こんな程度の波は怖くない。でもジャマだ。なんとかならないか。角度を少し変えたけれどうまくいかない。風が弱ったところで私はタックをした。
 岸へ向かう。
 おお、なんだか調子よいぞ。スラロームでプレーニングしている感じに近い。これは気持ちイイ。疲れてムダな力が抜けたから? 他の選手と比べても(もちろんトップクラスではないが)、角度・スピードとも負けてない。頭の中ではロッド・スチュワートの「アイ・アム・セイリング」が鳴り始めた。

 ここで、十カ条作戦その○を決行。上マークへのアプローチ、バッチリ。この登りのレグは2回のタックでマークへたどり着いたぞ。スゴイじゃん、オレ。はじめてじゃないみたい。
 でも、下りに入って、やっぱり疲れていることを思い出した。調子のいい時はズコズコ行くけど、それが切れるとホント、ヤバイ。あっ、パーリング……こらえた。一度パーリングすると、恐怖心が芽生えた。より高度な集中をしないとナニかをキープできない。私は、心の中でクイーンの「ウィ・ウィル・ロッ ク・ユー」を奏で、再びアルラゴンになることにした。あっ、でもなんか肩に力が入っている。再度、山田プロスマイルを思い出した。
お腹は「ウィ・ウィル・ロッ ク・ユー」で、
顔は「山ちゃんスマイル」
こんな高度なセルフコントロールはめったにやらない。

 ああ、もう壊れてしまいそう!

 沈!セイルアップ。左足がつった。再びセイルを落とし、再トライ。あっ、両足つった。おっ、お願い、セイルが上がるまでガマンして。


 そのあと、ボードをビーチに向けて走らせた私を、
どうか責めないでほしい。
「完走」という目標はなんとかクリアした。
「赤点」は免れたと理解したい。
もちろん課題や山積みだが。
沖ではレースが続けられていた。


 メンズ、2レースを消化し、レディスのレースが始まった。
 コースは1周。メンズのコースをハーフカットして行われる。レース海上がかなり沖になるので、詳しいレポートはできないが、スタート直後にロボが沈したのかな?(ザキが隣りでそう話していた) で、上マークへはニイムラが1位か2位で入って、下りのレグで相手に離されそうになって、ジャイブを切って……結果的にはダントツでゴール! したように見えた。ニイムラ! このへん、自己申告レポートをメールしてくれ。あとで足すから。→先日届きました「ニイムラレポート」 本稿の最後に追加してあります!


(写真はロボ。頑張りました)


 昼休みのあと、1時30分からメンズのレースが再開されることが宣された。私たちはお握りやらウィダインゼリーやらアミノサプリやらバナナなどを昼食とし、午後の部に備えた。
 風が少し上がってきた気がする。セイルサイズは……コングに訊くと「午前中と同じで行く。大丈夫じゃない?」とのこと。7.6を張るのが億劫だったり、それで出るのが恥ずかしかったりする私は、9.3で出る覚悟を決めた。

 「アベレージで18〜20ノット、ブロウで26ノット……」
 大会本部からそうアナウンスされた。
 「えっ、そんなに……」
 本部にはプロを含めた数人が押し掛け、本部スタッフとなにかモメていた。
 「こんな風でレースをやるのは20ノット以上ではやらないという規則に反するのではないか」
 「いや18〜20ということであって、20を越えているわけではない」


 私は7.6を張ろうか悩んだ。時間はない。バタバタと慌てるのはイヤだった。私は考えた。完走することはできないかもしれない。いや、きっとできないだろう。でも、レースじゃなければ、この風に9.3で出ることはないだろう。
 「味わってみよう」
 と思った。
 ジリジリと出艇の時間が迫る。「ウィ・ウィル・ロッ ク・ユー」がもう一回かからないかな、と思った。

 1時。出艇。
 海上へ出ると……吹いている。とても強い。午前中に記録した「アップウインド人生・最大風」の記録は、あっさりと更新された。
 午前中は、ブロウをガマンすれば、なんとかこなせた。だが、今の風は、海上すべてがガマン海面だ。
 スタートシークエンス中に沈してしまった。リカバリーしているうちにスタートホーン。ジャイブを2回くり返し、やっとスタートラインへ向かう。出遅れた選手とセイルを落としている選手数人をかわしてスタボーを伸ばした。
 先行している選手のスグ上を追い越す。私のセイルのブランケの影響を受けたのか、スグ後で沈する音がした。ごめんね。
 ほとんどコントロールしている実感のないまま、上マークへ向かうが、体はもう悲鳴を上げている。足はいつツってもおかしくない。うねりはさらに大きくなり、「こんなの検見川の波にくらべれば全然こわくないぞ」って思っても、道具の大きさと体の疲労が心をいたぶる。
 「オレはここまでなのか……」
 何回かの沈の末、心の底で誰ががつぶやく。このまま体力の消耗を繰り返せば、近い将来、自分はなにも動かせなくなるかもしれない。
 私はリタイヤを選択した。


 ビーチへ帰るとニイムラとロボが来た。ひとことふたこと言葉を交わしたあと、レディスに召集がかかり、それは午後のレディスのレース中止を告げるものだった。これでニイムラのレディス1位が確定した。おめでとう、ニイムラ!


 自分で決心したことだから、その結果は自分で受け入れなければいけない。それは分かっているが、リタイヤした私は、どうもビーチでの居心地が悪く、車のかげから沖のレースを眺めていた。本部に入る無線が聞こえる。
 「こちら海上本部、ただいまセイルナンバー○○、○○選手をレスキュー中。そのため進行が少し遅れています。○○選手、3レースリタイヤ。4レースもリタイヤです」

 3レースが終わったのだろうか。三浦の小野さんが帰ってきて、そのまま道具を上げてしまった。

 「ハーネスの金具が折れた」とザキが帰ってきた。ニイムラのハーネス金具に取り替え、また戦場へ帰っていった。がんばれ、ザキ。お前はすごいよ。



(わずかなインターバルの後、第4レースに向かってビーチから
「発射」される選手たち。スタート船はず〜っと沖。)

 第4レースがはじまった。
 レースがはじまったにもかかわらず、何艇ものアップウインドの道具がビーチに上がっている。彼らはリタイヤした。でも、まだ負けたわけじゃないだろう。私も……そのはずだ。

 メンズの第4レース終了をもって、今大会のすべてのレースは終了となった。表彰台に乗ったニイムラはとてもうれしそうだった。また、順位的には本意ではないだろうが、J20杉原選手、J85コング選手も表彰された。もちろん、表彰されていない選手も、みんな頑張った。



 閉会式のあと、J20杉原選手と神戸で飲んだ。その時に「午後から7.6で出るべきだったのか、今でも悩んでいる」と話すと、彼はこう訊ねてきた。
 「午前のレース、道具を完璧にコントロールできてました?」
 「いや、できていない」
 「それならば、7.6で出るべきでしたね。他人がどうあろうと」

 彼とサシで飲むのは久しぶりだ。いろんな話ができた。「それ、みんなにバラしちゃってイイ?」「ダメですよ」というようなウインドのノウハウ話も聞くことができた。

 ユウジくん、有り難う。イイ人だ。


 「喧嘩っていうのは、それが勝ち戦だとしても、
帰ってみるとけっして無傷ではない……」
芥川賞作家・丸山健二の作中の言葉である。
 レースが喧嘩だとは言わない。
しかし、レースに出た以上、
その体験は必ずなにかの爪痕を残す。
その爪痕を望み、受け入れる者だけが、
きっといつか勝利をおさめることができる。


 遠くに輝くエメラルドグリーン。

ブロウになぶられる美しい海面。

パーリングで水に飲まれていくバウ。 

タックした時に見えた景色。

80人が並んだスターライン。

リタイヤして帰る途中、はるか風上に見えた戦士たち。

 ……和歌山でのいろんなシーンが目に浮かぶ。それは私の身体にしみついている。中には、まだうまく言葉で語れないこともあるけど、それらも確実に私の一部になっているのだろう。

「10回の練習より1回のレース」である。

 和歌山の海にお礼を言いたい。そしてあの海面を共有した仲間や応援してくれた仲間にも。46歳のレース初心者、これからも頑張ります。 (J-222 記)



リザルトは下記
http://www.withone.com/jpwsf/result2004/hamanomiya_result_2004.htm


さてさて、ここからはレディスチャンプ、ニイムラのレポート

1日目 和歌山で、×?回目かの誕生日を迎えた。何かが起きそうだった……(ナンダ!)

2日目の朝!
 メッチャ晴れてて気持ち良いんだけど、なんか吹いてるし……
アップウィンドのレースに行くようになってから、ドンブキサバイバルレースしか体験してない。
 「ハァ〜今回もかぁ〜」
と思っていたら、レディースクラスが呼ばれ、
 「今日は風が吹きすぎていて、危険なのでウェイティングします」
 「やったぁーーー\(^o^)/」
 
などと心に中で叫ぶ。 そして、のんきにサーキットクラスのレース観戦。
 みんながんばれぇ〜〜〜 ……………………あれっ?なんかお腹がシクシクしてきた。決して緊張からではない。ヤバイ!昨夜呑み過ぎたかも???? 水分取り過ぎた。。。
そんな時、集合がかかった。
 「まっ、まさかレースやんの?」
 「レディースクラスは、サーキットクラスと入れ違いにレースをやります。12時スタート予定です」
 と告げられた。
 「海上で津波が襲ってきませんように」と願い、お腹をさすった!!

 今回、道具的にはミスマッチだが、ババブキのため、初めて7.4をチョイスする。(うんうん、これは弱気なチョイスではない。ケンメイケンメイ)
 少しくたびれた7・4をフォーミュラーボードにセット。スタート海面に行く前に、上り、タック、下り、ジャイブを試してみた。
 「なんか変!ブーム低いし、ジョイントの位置って変えなくていいのかな?どうしよう?」
そんな時、レースを終えて帰ってくるコング先生発見!!
 「コング〜7.4初めて乗せたんだけど、ジョイントの位置って変えなくていいの?」
 「大丈夫!でもブームはスラの時より上げなきゃダメだよ」

 なるほど、了解!!やっぱりブームは上げて良いのね。
そしてその直後、コング先生から極秘情報を入手したのである(ウホウッ、あの話だね)
 それは、後に大事な大事な魔法の言葉になるのであった。。。

スタート6分前! ヤバッ!タイマー押せなかった。っていうかロボが居ない。
スタート3分前! 今回は押せた。浜に帰っちゃったのかなぁ〜?
スタート1分前! ソロソロとラインに入って行く。ロボ〜何処〜?
スタート!!   だだっ広いスタートラインに3人!
その直後に1人撃沈したのを見てしまった。2人旅になった。

 7.4は楽なんだけど、走らない、上らない。
 「オッセェー」
 
と叫びながら上マークを探す(過ちその1)
そういえば、上マーク何処にあるんだろう?見当たらない。風上を必死に探す。
 やっと見つけて、タックする。相手は8.2でスピードがある。
どうすれば、勝てるか考えてるうちに上マークが近づく。
 「よしっココでタックだ。」(過ちその2)
 
風も足りなく、振れた。マークから離れて行く。
 結局、後2回タックしなければならなくなったが、なんとか上マーク1位で通過した。

 このままガンバレ自分。

 と思ったのも束の間。風が足りない。止まりかけてる。
ババババババァー
 
後ろからなんかすごい勢いで近づいてくる。一気に抜かれた。
ちっちゃいセイルのうえ、下りの下手な私の夢がはかなく終わった瞬間であった……

 ☆いつものわたしならば、の話である☆

 ここで、コング先生からの魔法の言葉が脳裏をよぎる。
普段、あんまり考えないニイムラが、いつもより考えた。
このまま同じコースを走っていても抜ける訳がない。
ジャイブの回数が増えるけど、勝つ為には別ルートを行くしかない。

 風を見る!
 絶対来る!
 これならいける!
 っていうか行け〜!!行っておしまいぃ〜

 ジャイブの直後ブローをとらえるものの、やっぱりガスティー(T_T)
普段パンピングなんかしないのに、必死に漕いでがんばってみた。ブローがつながった。
 そして、ジャイブ!!
 んっ???えっ!ウソ???マジ???なにぃーーーーーーーー

 抜いていた。しかもかなりの距離が開いている。

 ニイムラ最高!!
 いけてんじゃん!!
 ここからは自画自賛タイムであった。

 が、喜んでばかりいられない。沈したら終わりだから、そこから慎重に慎重に……すると視界の端で、誰かが沈しているのが見えた。
 ここで、焦らず最後のジャイブのポイントを考える。角度より、スピード重視でちょっと?実はかなりオーバーした所で最後のジャイブ。アビームに近い状態で、下マークを回航し、そのままアビームでゴールまっしぐら。
 本部船の人の動きがよく見えた。
 私の為にホーンを用意してる。
 カメラマンの人が、構え始めた。
 だんだん顔が、にやけて来る。

ヤバイ!キリッとした顔しなきゃ〜


 と思ったが、

ダメだ〜満面の笑みになってしまってる。

 ゴールホーンが鳴る。ちょー気持ちいぃーーー\(^∇^)/


 何が嬉しいかって?1位なのはもちろんなんだけど……。今まで、下りのレグでこんなに上手くいった事がなかったし、負けるのは、いっつも下りがヘタクソで抜かされていたし、今回は、上りのレグで失敗もあったけど、苦手な下りで勝てた……。
 だから、嬉しかったのであるぅーーーー。
 さらに浜に帰ると、仲間達から手が差し出された。
???やったねの握手だった。感激した。


帰りの車の中で、大量のお祝いメールが届いている事に気づいた。
私の事で、こんなに喜んでくれる人達がいた。
BBSにも、おめでとうと言う書き込みがいっぱいあった。
めっちゃうれしかった。
今回勝てたのは、みんながいて、応援してくれて、大会に一緒に行く人達がいて、
普段一緒に練習してくれる人がいて、的確なアドバイスをしてくれる人がいて・・・・・
だからがんばれる自分がいました。
皆さんに感謝ですぅーーー。ありがとうーーーーーー