EXCEL カスタムボード 発注記


とうとうスラ板を削ることになった。
あこがれのエクセル・カスタムである。
その出来上がるまでの顛末をここにレポートする。
(J-222記)


どんなボードを作る? シェイパーの勝又まさる氏と打ち合わせ。

 昔のエクセルのボードは「速い!けど暴れる」という印象があった。しかし、昨年(2001年)にJ-43杉原店長のエクセルを借りて乗った時の印象は、まったく違ったものだった。第一印象は「軽い!」であった。無垢の発泡スチロールに直接、素足を乗せている感覚。当然、加速はスゴイ。そしてジャイブも潜入観念とは異なり、とても素直で扱いやすかった。その時から、「次のボードはエクセル」と決めていた。
 さて、そしていよいオーダーである。私がどんな海面でどんなセーリングをしているのかは、まさる氏も知っている。いつも海で会っているので、その点では話しは楽だ。まず、セールサイズを6.9に決める。近い将来、スラロームのレギュレーションや各セイルメーカーの動向から、7.0台も乗せられることを想定。さらに「6.4も乗らないかな」とわがままな希望を伝える。「基本的には、7点台から6.4までをジャストでというのは難しい、でも、今のうちのボードは、海面が荒れても暴れないよ」というまさる氏の弁。私は納得して6.9メインのボードにしてもらうことにした。
 基本的には先に削られている鈴木コング選手と似たスペックのボードになるとのこと。ただ、私の体格や技量を考慮し、削るときに微妙な味付けがされるらしい。さらに強度も、選手用よりは多少アップさせてくれるという。いやいや、楽しみだ。


デザインの打ち合わせはカスタムならでは。なんと私のデザインがエクセルライダー用にも採用されることに!

 どんなデザインにするかを相談できるのはカスタムならでは。そういうワケで、昔のカスタムはハデハデなカラーリングが少なくなかった。しかし、今はプロダクションのデザインが「これでもか!」というほどに色を使っている。そんなところで多少の色を使ってもカスタムのアイディンティティにはならない。そこで私は、ホワイトを基調にし、シンプルな中にクールな主張のあるデザインにしようと思った(ホワイトベースなら、リペアも簡単だし……)。
 掲載の写真は、マッキントッシュで作成したデザインイメージである。デッキにはオリジナルのエクセル・ロゴ。これは、もともとあるエクセルのロゴを、このボードのためにアレンジしたものだ。通常、ブランドのロゴをいじる、というのはイヤがられるものだが、まさる氏はこのデザインを見て、快く引き受けてくれた。
 そしてボードのサイドにはよく見ないとわからないくらいの色で「E-magic for slalom」の文字。さらにデッキ最後部には「Shaped by WOW」……「WOW」はWin or Win……つまり、勝又まさる、の意。その下にはまさる氏の手書きのサインが入るという念の入れようである。
 打ち合わせの後日、まさる氏から連絡があり、私がアレンジしたエクセルのロゴを、今年度のエクセル・ライダー用ボードに使いたいとのこと。いやはや、たいへんな話になってしまった。

エクセルのライダーボードに採用されることになったロゴデザイン。

いよいよボードシェイプ。

 もともと箱形の発泡スチロールを大まかなフォルムに切る。そして、その後、ボードに命を吹き込むシェイプとなる。ボードシェイプには、確かな技術と卓越した感性、そして経験と勇気が要求される。おそらく「選ばれた者」にしか成し得ない仕事であろう。


「巻き」のノウハウは誰にも教えられない。

 当然だが、シェイプしただけではボードにならない。それを堅固でしかも軽い外殻でくるまなければならない。ここの作業はいくつもの工程に分かれ、時には人に教えられないような(?)スゴイ素材を使ったりもする。最も重要な工程を行う部屋には「KEEP OUT」「立入禁止」の札がさがっていた。う〜〜ん、みんな鎬(しのぎ…刀の刃と背の中間)を削っているのだなぁ。

色吹き、ステッカー貼り。

 巻きの終わったボードにホワイトの色を吹く。ここで露わになるフォルムは、とても美しい。そして、そこにデザインを入れていく。今回は、デザインに合わせて私がステッカーを用意しておいたので、それを貼り付け、最後にノンスリを吹くのだ。あと少しで完成だ。
白無垢のボード。まるでマイセンの白磁のように美しい。

デビューは沖縄ツアーだ!

 12月13日に最初の打ち合わせをし、1月9日、遂に完成!そしてそのまま梱包し、沖縄行きの船便に積み込んだ。まるで、結婚したが初夜はまだ、という心境である。ともあれ、思い通りに出来上がった。この気持ちは、やってみたものでなくては分かるまい。沖縄での乗り初めが楽しみだ。本当に楽しみだ。その様子は、後日、沖縄ツアーのレポートに掲載する予定。
 「ボード1本つくるのにどのくらいかかるんですか?」……まさる氏は答えた。「つきっきりでやって、1週間から10日はかかるね」 つまり、一月に3本〜4本しか作れないということ。う〜〜む、大事に、そしてたくさん乗らなくては。

 


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